質より量か、量より質か。技術を学ぶ人々の永遠のテーマ【ゲーム開発】
技術を磨く上で永遠のテーマとも言える問いかけが「質より量か、量より質か」というもの。
質の悪い状態で繰り返しても良くないし、さりとて量をこなさなければ改善できないし、と、どちらに注力すべきか迷うのは人間のサガです。
個人的な考えだと、「質より量」派です。
実は量をこなす事で、とある強力なパワーを使う事ができるからです。
そのパワーとは一体なにか想像つきますかね?
ヒントは投資です。
…………
……
…
答えは「複利」です。
量をこなす事で、複利の力を使う事ができるんですね。
いつもお仕事で「PDCA! PDCA!」と叫ばれますが、ひとつのプロジェクトを区切る事で成長のチャンスが生まれるのです。
質より量か、量より質か。モデル化してみる
例えば、元々の能力が100だったとして、1ヶ月に10%分だけ質を高められるとします。
6ヶ月のプロジェクトを1つ終わらせた場合、プロジェクトが1つしかないのでPDCAサイクルは1回分です。
そうすると、ベースラインがそのままの状態で100に対して10%の質アップが6つ分あるとして100 * 1.6 = 160まで成長します。
一方、1ヶ月のプロジェクトを6つ終わらせると、PDCAサイクルは6回分あります。
成長のチャンスが数多くあり、かつ前回のプロジェクトからの改善によってベースライン自体が成長します。
100に対し10%の複利が6回かかるとして、100 * (1.1)^6 ≒ 177まで成長します。
これを表にすると以下のようになります。
グラフにしてみると違いが分かりやすいかもしれません。下にある水色の線がひとつのプロジェクトで質にこだわった単利のモデル、上の黄緑色の線が量をこなした複利のモデルです。時間経過によって差が開いているのが分かります。
さらに1年続けたケースをグラフ化してみると以下のようになります。単利だと220、複利では約314まで伸びていきます。このモデルだと100近くまで差が広がることになりますね。
モデルを実物と照らし合わせる
このモデルを実際のプロジェクトと照らし合わせて考えてみましょう。
ひとつのプロジェクトを長期間続けた場合、これは単利モデルで技術が向上していきます。ここではあくまで技術の向上に焦点を当てているので、もちろん全く技術が伸びないわけではありません。
ただひとつのプロジェクトだけだと、新しいことをやらないので実装パターンが思うように増えていかないんです。むしろプロジェクト内で実装方式を変えたらそれはそれで大問題ですからね(笑)
複数のプロジェクトをこなしていく複利のモデルでは、プロジェクトごとに新しい実装方式を試すことができます。引き出しが増えていくことで自分ができることの幅が広がっていくため、開発において回数はかなり重要です。
実は書いた記事で紹介した使い回しも成長の一種で、コードを使い回すことで短縮された時間は別の部分の質を高めることに使えます。
このように時間を再投資していくことで、自然と全体の質が上がっていきます。これが複利の強みだったりします。
始まりと終わりの区切り
人間の脳は始まりと終わりを区切ることによってひとつのまとまりを認識します。どこからどこまでがその事象なのか、区別によって認識しているんです。
ゲームを作る場合は「プロジェクト」という単位で区切りが生まれます。「こんなゲームを作りたい!」という着想から企画、設計、開発、テストを通して最終的にリリースを迎えます。プロジェクトでは期間が決まっていますが、これは区切りをつけることでひとつのプロジェクトであると認識することができます。
プロジェクト単位でPDCAをすべし、とよく言われますが、人間は終わっていないものについて評価をするのは結構難しくて、途中の段階だと「いやでもこのあと良くなるから……」とついつい甘い評価になってしまったりもします。
その点、ひとつのプロジェクトとして区切りをつけておくことで、客観的な指標を使って評価することができるんですね。今目の前にあるがままの姿を見て評価を行うことで、「ここはうまくできたから次もやろう」「この点はもう少しうまくやる方法があるはず」といったように自分の感情を排除して判断することができます。
効率化の誘惑
あなたも普段のお仕事で「効率化! 効率化!」と上司からケツを叩かれているかもしれません。業務の改善、業務の効率化はやはり社会人にとって、とても魅力のある行動です。なんならITはその効率化をシステムによって実現することで価値を生んでいますからね。
この考え方はもちろん大切なことですが、ひとつの重要な観点を見落とすリスクもあります。それは、効率化したシステムを運用することで初めて効果が生まれること。いかに利回りが良い投資先を知っていても、元本を入れないと意味がないですからね。
技術的な観点から言えば、いかに効率の良い開発方法を知っていたとしても、実際に手を動かしてみなければ習得していないのと一緒です。他の人の知識を学ぶ事はとても大切ですが、学んだら次は実践です。
まとめ
質は量に裏付けされているものなので、まずは量をこなすことを検討してみてください。他の人からの学びを行うのはとても大切ですし是非やるべきですが、そのあとは是非実践まで進んでください。
実際に手を動かしてみる事で、伝えられたメッセージに入りきらなかった機微が自分の肌感覚として理解できます。理解というのは最終的に自分の中でどのように処理するかが大切なので、理解の仕方も個人差があります。この個人差を認識する事で、「あの人はこの部分をこう表現していたんだ!」とさらに学べる情報が増えていきます。
この肌感覚を得るためには実践、つまり量をこなしていくことが肝心です。
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