作ったゲームのユーザーは同じ情報を知っているとは限らないんです
ゲームを作るときにはターゲットユーザーを決めることが大切です。決めたあとは、ターゲットユーザーたちがどのような知識を持っているのかを想像する必要があります。
というのも、私たちが知っていることとターゲットユーザーたちが知っていることは同じとは限らないからです。
同じ日本で生まれて育ったとしても、育った地域や環境が異なっていれば、学んできた情報にも差が生まれてきます。
これは単純な知識量の差という意味ではなく、コンテキストが異なるという意味です。この点を意識できるようになると、ゲーム開発者の独りよがりではなく、よりユーザーの心に刺さるゲームが作れるようになります。
コンテキストが異なる例
これまでの経験(コンテキスト)が異なる例として、私が通っていた高校の話をしましょうか。
私が通っていた高校は制服の指定がなく、私服で授業を受けていました。同じ地域にある高校は私服の学校が多かったので、私はこの経験から、「高校は私服で行くもの」と思っています。
しかし、あなたが通った高校では制服があったかもしれません。
そうすると、あなたと私で高校時代の服装に対する情報が異なっていますよね。
この状態で、私がゲーム内で「教室に入ってきた彼女の服は目を引くカラフルなものだった」と言及したとしましょう。
もし「高校は制服で通うもの」と思っているあなたがこの文章を読んだとしたら、「みんな制服で通ってるのになんでカラフルなの? 制服自体がカラフルなのかな?」なんて思ってしまうかもしれません。あるいは「彼女」が指しているのは生徒ではなく教員なのでは? という疑問も生まれるかもしれません。
このように暗黙的に認識している情報に差異があることも多々あるので、認識にズレが生じそうなことについてはゲーム内でしっかりと言及しておく必要があります。
RPGやノベルゲームは要注意
認識のズレ、コンテキストの違いは、主にストーリーのあるRPGやノベルゲームなどで顕著です。
ゲーム開発者である私たちだけが知っている情報を並べていないか、確認しておく必要があります。
ストーリーを語る上で勢いを重視すると、後から読み返すと語るべき項目を語っていなかった、ということがよく起こります。例えばゲームの冒頭でチラッと説明した世界観について、さも当たり前のように盛り込んでしまうとユーザー側はついていけなくなります。
「ホニャララの村に向かえ」という指示は作っている側にとっては位置を知っているのですぐに場所が分かりますが、そのゲームに初めて触れるユーザーは場所が分かりません。なので、ゲーム内できちんと「ここから南東にあるホニャララの村に向かえ。途中にある大きな木が目印になるはずだ」みたいな若干説明的な解説も必要になったりします。
「何を当たり前なことを」と思われるかもしれませんが、「おそらく伝わるであろう」という投げっぱなしな感覚ではなく、ちょっと冗長かもしれないけど明確に言葉にしておくことで共通認識を作ろう、くらいの感覚でちょうど良いです。
ユーザーのいる国
ターゲットとなるユーザーがいる国もちゃんと考えた上で情報を提示を考える必要があります。
ストーリーのあるゲームを作る場合は日本向けに作ることが多いかもしれません。しかし、もしローカライズするとなった場合、対象の国の人々が持っている情報と、作っている私たちが持っている情報が異なっていることを念頭に置いておきましょう。
国が違えば文化も違いますし、細かいところでは挨拶の仕草、会話でのマナーなども異なっているかもしれません。普段暗黙的に使ってるこのコンテキストの部分で違和感があると、ゲームへの没入感も失われてしまいます。
ターゲットとなるユーザーがいる国におけるコンテキストも大切です。
武器や魔法の名前もチェック
以前書いた記事で「武器や魔法のネーミングにおいては厨二病の心を抑えよう」なんて書きました。
武器や魔法の名前として神話に出てくる名前などを使うこともありますが、ユーザーが置いてけぼりにならないかを確認するのも大切です。
ゲームによっては説明欄を設けてなんらかの解説を行うこともあります。この説明欄では、相手が元ネタの神話を知っている前提で書くのではなく、その神話を知らなくても伝わるような説明文にする必要があります。
例えば「天沼矛(あめのぬぼこ)」という武器を登場させるとしましょう。この武器は日本神話に出てくる、国産みのエピソードで登場する矛です。イザナギとイザナミが天界からこの矛を使って混沌とした海をかき混ぜたところ、矛を引き上げた時に垂れたしずくが固まって「オノゴロ島」という島ができました。イザナギとイザナミはこの島に降り立って結婚し、日本列島を作り上げました。これが国産みのエピソードです。
これらのエピソードを踏まえて天沼矛の説明文を考えるなら、「イザナギ」や「イザナミ」というキーワードは伝わる可能性が高いでしょう。日本神話を詳しく知らなくても、この名前だけは聞いたことがあるという人も多いかもしれません。なんとなく偉い神様の名前だろうな、ということから強そうな武器であることがなんとなく分かります。
しかし、「オノゴロ島」というキーワードが入っていると、この国産みのエピソードを知っている人にしか伝わりません。なんとなくで日本神話を知っている人だと、ここまで細かく覚えていることもないと思います。
あるいは日本神話を完全に知らない人に向けるなら、「偉い神様が使っていた武器」くらいの説明文になるかもしれません。
ターゲットユーザーが持っている情報を考慮することで、ゲーム内でどこまで語るかが変わっていきます。
カジュアルゲームは説明文などをチェック
一方で、カジュアルゲームなどのストーリーがそこまでメインの要素でないゲームであっても、例えばヘルプ情報やチュートリアルなどで開発者側が意図したことが伝わるかどうかターゲットユーザーの目線で想像する必要があります。
カジュアルゲームの場合、分かりやすいゲームになっていることが多いので、「これならプレイヤーも分かるだろう」と説明を簡単にすることがありますが、ターゲットとなるユーザーがゲーム内の情報をもとにちゃんと遊べるかどうかをチェックしてみましょう。
自分だけで想像するのが難しければ、友人に見てもらうのも良い手段です。自分でチェックしていると脳内で自動的に情報を補完してしまうので、なるべく客観的な目線でチェックを入れると良いでしょう。
特にカジュアルゲームであれば1ゲームあたりのプレイ時間もそんなに長くないと思うので、すぐ側でゲームを遊んでもらってフィードバックをもらうのも良いかもしれません。
念のため方言も
書き言葉で方言が出ることはあまりないかもしれませんが、地方によってはニュアンスが伝わりにくい方言もあるので事前に確認しておくに越したことはありません。
同じ日本国内であっても、地域によって学校生活の文化も異なっているでしょうし、細かい言葉の違いもあったりします。例えば私は学校が終わった後のことを「放課後」と呼んでいますが、別の地方では「放課」と呼んでいたりします。……愛知県狙い撃ちでしたね。
こちらも自分以外の友人にチェックしてもらえると良いですね。別の地域出身の友人であればなおグッド。
説明文でうっかり方言を使っていたり、自分の地域特有の情報が並んでいたらリリース前に気づくことができます。
まとめ
ターゲットユーザーが持っている知識を想定し、必要な情報があれば事前に提示することで、ユーザーがゲームを遊びやすくなります。
どこまでユーザーの知識を当てにするかは選んだターゲットによって変えるべきで、広くユーザーに遊んでもらうなら共通しているコンテキストの量が少ないと考えて説明の提示が多くなるでしょうし、逆にある程度ターゲットを絞っているなら共通するコンテキストが多いことから説明の量もそこまで増やさなくても良いかもしれません。
……とまぁ考えすぎると手が止まってしまうかもしれないので、ちょっと多めに情報を提示する方針がちょうど良いと思います。
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