ゲーム内で情報を提示する際はドヤ感が現れないように注意しましょ
「ターゲットユーザーと私たち開発者では必ずしもコンテキスト(それまでに積み重ねた知識や経験)が同じではないので、認識のズレが起こるかもしれない情報については明示的に示しておく必要がある」ということを別の記事で書きました。
ゲームをスムーズに遊んでもらうために、ユーザーと私たち開発者の間に共通認識を作っておくことは大切です。
ただ、ここでひとつ注意点があるのでこれも共有させてください。
何に注意すべきかというと、「ドヤ顔で情報を提示するのは止めよう」という点です。
どういうことかというと、事前に共通認識を作るためにユーザーに情報を提示している際、「私(開発者)はこんなことも知ってるんですよ。すごいでしょ」みたいな提示の仕方をしているゲームがたまにあります。……たまにありますというか、私が昔RPGツクールで作ったゲームがこんな感じだったんですけど(笑)
これ、遊んでいてちょっと恥ずかしい気持ちになりませんか? 「うわぁドヤ顔が透けて見える!」とこっちまで厨二病を患ったような気持ちになります。共感性羞恥ならぬ共感性厨二です。恥ずかしさという意味では一緒かもしれません。
このページではRPGやノベルゲームなどのストーリーがメインになるゲームを想定していますが、他のジャンルのゲームでもついつい語りすぎていないかを確認するのが大切です。
ゲームの基本は楽しんでもらうこと
ゲームの基本は、ユーザーに楽しんでもらうことだと思っています。なぜなら、ユーザーは貴重な時間やお金を使って私たちの作ったゲームを遊んでくれるからです。
それなのに、開発者が自分の知識をひけらかして気持ち良くなってる姿を見せられたら、たまったもんじゃないですよね。
ゲームを楽しむために必要な情報ならユーザーのために提示した方が良いですが、ゲームに関係ないことまで延々と語り続けていたらユーザーも「もうお腹いっぱいです……」と胸焼けしてしまいます。
例えば、神話のエピソードがストーリーの伏線になっている場合はゲーム内で提示すべきです。イザナギが黄泉の国に向かってイザナミを取り戻しに行ったけど、醜くなった姿を見て逃げ帰ってきたエピソードにちなんでストーリーを作ってあるのであれば、直接的ではないにしろなにかしらヒントとなる情報を提示しておくと、「あ、これは日本神話をモチーフにしているんだな」みたいに捉えてもらえるので、ストーリーの構造を理解しやすくなります。
逆になんの関係もない神話のエピソードを語ってしまっていたら、それは不要な情報になってしまいます。上の例で不要なエピソードだと……ギリシャ神話でもオルフェウスが冥界に向かって妻のエウリュディケーを取り戻しに言った、なんて話までしてしまったら余計になってしまうかもしれません。日本神話とギリシャ神話で共に死者の国に向かって妻を取り戻しにいくけど失敗した、という共通性は神話を知っている人にとっては興味深い話ですが、ゲーム内のストーリーに反映されていないなら不要な情報ですし、開発者が言いたいだけの情報になってしまいます。
この点はもちろんターゲットユーザーの気持ちを考える必要があります。追加の情報があることで知見を得ることができる、という点が好みのユーザーであれば関連する情報を提示するのはアリです。でもゲームそのものの操作をメインで楽しみたいユーザーにとっては「早く操作させてくれよ……」となってしまいます。
メインとなるユーザーがどちらのタイプかによって、どの程度語るかを調整した方が良さそうです。
これがあったら危険な兆候かも
ゲームを作るために様々な資料をあたって情報を集めますが、それが楽しくなってきてしまったら黄色信号です。
「調べた知識を使いたい!」と思ってしまうのが開発者のサガ。調べた情報ってついつい全部言いたくなりませんか? 自分にとっての新しい発見って、どうしても人に伝えたくなっちゃうんですよね。
「よく知っているね!」「よくここまで調べたね!」という言葉を聞きたいがためについつい調べたことをフルバーストで喋ってしまおうとすると……ドヤ顔が思い浮かんできます。
ここで、一度冷静になって、ユーザーにとって必要な情報かどうかの判断をしなければなりません。
ユーザーが必ず通る場所であれば、ストーリーに関わる情報に絞るようにしましょう。なんらかの神話をモチーフにするのであれば、それはストーリーとも関連させた方が良いです。知っているとゲームを楽しむために役立つか? という基準で語るべき内容を精査するのも大切なことです。
どうしても語りたくなったら
どうしても調べたことを盛り込みたくなったら、本筋とは離れた場所で提示する方法があります。
例えばRPGなら、アイテムの説明文や敵の図鑑などで提示するのは有りだと思います。
ユーザーが見る/見ないを決められる場所でそうした情報を提示するのであれば、フレーバーテキストとして受け入れてもらいやすいと思います。フレーバーテキストとは効果の説明ではなく、ゲームの雰囲気を作るための文章のこと。まさにアイテムの説明文などがこれに該当します。
アイテムの効果についてはゲームプレイの上でシステム的に必要な情報になっています。これに加えて、アイテムの由来などを語っている文章がフレーバーテキストです。フレーバーは味わいのことで、ゲームの味わいを深めるための文章でもあります。
図鑑機能は興味のある人だけ見るものなので、本筋と関係のない文章があったとしても受け入れてもらいやすい場所です。むしろゲームの世界に対する理解が深まるため、より楽しんでもらうための要素として使えます。
ここでも調べたことを全て語るというよりは、アイテムや敵に関連した項目を語るのが良いでしょう。
あるいはクリアには関係のないサブストーリーの中で語るのも良いと思います。ここでもやはりストーリーとの関連は必要ですが、メインストーリーの中で語らなかった部分にフォーカスを当てることができるでしょう。
まとめ
ゲーム内でなにかを語る場合には、ドヤ顔で知識をひけらかすように語るのは避けた方が良さそうです。
ゲームの主体はあくまでユーザーなので、ユーザーにとってゲームを楽しむために必要な情報かどうかを考える癖をつけておくとユーザーフレンドリーなゲームになっていきます。
ゲーム開発の攻略チャートを作りました!
-
前の記事
作ったゲームのユーザーは同じ情報を知っているとは限らないんです 2020.08.05
-
次の記事
【Unity】Boltだけで作ったサンダーボルトユニティちゃんをリリース! 2020.08.07
コメントを書く