価格で比較する3つのゲームエンジン【安いのはどれ?】
「ゲームエンジンの存在を知ったけど、お金ってかかるの?」
「なるべく安くゲーム開発を始めてみたいな」
というあなたに、この記事を贈ります。
この記事では、
- 価格でゲームエンジンを比較
- 稼いだ金額ごとのシミュレーション
を解説しているので、ゲームエンジン選びの材料にしてもらえたら嬉しいです。
→(2021/05/31 追記)しばらくキャッチアップできていませんでしたが、Unreal Engineでは2020年半ばにパブリッシングライセンスが更新され、ロイヤリティに関する条項が変更されました。製品の生涯総収益のうち、最初の100万米ドル(日本円にして約1億円)に関してはロイヤリティは発生しません。これを超えたら5%のロイヤリティの支払いが発生します。(以下は古い情報も含まれるので追記部分の赤字もチェックプリーズ。)
ゲームエンジンを使い始めるのにはお金はかからない!
最初に答えを言ってしまうと、この記事で紹介しようとしている3つのゲームエンジンでは、使い始めるのにお金はかかりません。
会社の資金調達の規模だったり、リリースしたゲームの収益に合わせて支払いの必要が出てくるものがありますが、ゲーム開発の流れを体験する部分では無料で使えるんです。
これからゲームを始めたい人にとってはありがたいことですよね。
「始めてみたいけど、ウン十万も出せないよ……」なんて開発を諦めてしまうことも無くなりますから。
頭の中にあるアイディアを形にするための道具は、すぐに手に入る時代になったんです。嬉しい限りですね。
この記事で紹介したいゲームエンジンは以下の3つ。
- Unity
- Unreal Engine
- cocos2d-x
「おすすめのゲームエンジンは?」とエンジニアに聞いたら、おそらくこれらの名前が出てきます。個人的にも、この3つのどれかからスタートすれば良いと思っています。
支払いのタイミングをゲームエンジンごとに紹介
上で挙げた3つのゲームエンジンについて、どのタイミングで、いくら支払う必要があるのか、ライセンスと絡めて解説していきます。
なお、ライセンスごとの支払い体系については2020年2月5日に私が調べたものなので、都度公式の情報を確認するようにしてください。
→案の定更新されました(笑)
Unityのライセンス
Unity Technologies社が公開しているゲームエンジン「Unity」です。マルチプラットフォームでリリースできるのがとても嬉しいポイントです。
ライセンスは3種類あり、
- Personal …… 無料で使える。過去12ヶ月の収益や調達した資金が10万米ドル以下まで
- Plus …… 月払いだと4,400円、年間一括で43,995円。過去12ヶ月の収益や調達した資金が20万米ドル以下まで
- Pro …… 月払いだと16,500円、年間一括で198,000円。過去12ヶ月の収益や調達した資金が20万米ドルを超える場合
となっています。(企業向けのカスタムライセンスは除いています)
最初に始める場合は多くの人がPersonalライセンスになると思うので、無料で使い始めることができます。機能が大きく制限されていることもないため、ゲームを作る上ではほぼフル機能を使うことができます。
各ライセンスの資金の基準についてですが、ざっくりと1ドル110円で計算すれば、10万米ドルは1100万円なので、これを超えるまでは無料で使えることになりますね。
「じゃあ個人なら結構長いことPersonalでいいじゃん?」
と思われるかもしれませんが、Personalライセンスだとちょっと困ったことになるんです。
というのも、Personalライセンスでゲームをビルドした場合は、そのゲームの起動画面に「Made with Unity」のロゴが表示されるんです。ゲームの起動画面(スプラッシュスクリーン)はブランディングとして自分の会社やチームのロゴを配置したいところですが、スプラッシュスクリーンのカスタマイズができないんですね。
気にしない方ならPersonalライセンスでもいいかもしれませんが、そうでなければ資金の条件がOKだとしてもPlusやProに切り替えていく人が多いです。「多い」というのは私の個人的な印象ですが、アプリストアなどでダウンロードした個人のゲームでも、「Made with Unity」のロゴを表示しているものは見かけたことがないんですよねぇ……。
とはいえゲームやアプリをリリースする直前まではPersonalライセンスで行けるので、技術を習得している間は、ライセンスに関してお金はかかりません。
また、Unityで作成したゲームで収益を上げた場合、そこに対してはロイヤリティは発生しません。
Unreal Engineのライセンス
Epic Games社が公開しているゲームエンジン「Unreal Engine」です。なんといっても映像が綺麗な点がポイントです。ドラクエ11のエンディングでロゴを見た人もいるかも。
ライセンスは2種類あり、
- パブリッシングライセンス …… 無料で使用開始。ゲームをリリースして収益化したら、そのゲームについて四半期ごとの売り上げで3000米ドルを超えた部分に対して5%のロイヤリティがかかる
- クリエイターライセンス …… 無料で使えてロイヤリティフリー。ただしゲームをパブリッシングできない
となっています。(こちらもカスタムライセンスは除いています)
→(追記)2020年半ばにパブリッシングライセンスのロイヤリティが変更されました。製品の生涯総収益のうち、最初の100万米ドル(日本円にして約1億円)に関してはロイヤリティは発生しません。これを超えたら5%のロイヤリティの支払いが発生します。(以下は古い情報なので、金額の正確性というよりはロイヤリティ計算の参考までに。)
Unityと同様に、使い始めるのにお金はかかりません。支払いは「ゲームが成功したら」と表現されていて、四半期ごとの売り上げが3000米ドルを超えたら、その部分に対して5%のロイヤリティがかかります。1ドル110円だったら33万円がラインになります。
例えば、四半期で43万円を売り上げたとしましょう。33万円を超えた部分は10万円なので、この5%を計算すると5000円です。これがEpic Games社に支払う金額になります。
ポイントは利益ではなく売り上げにロイヤリティがかかる点です。App Storeを例に挙げると、アプリの販売価格が1000円だった場合、3割引かれて700円が私たちの手元に残ります。Unreal Engineのロイヤリティの計算は手元にある700円ではなく、販売価格の方の1000円が使われます。35円ではなく50円ですね。
売り上げから支払えばいいというのは、これから開発を始めたい人にとってはありがたい話です。支払う必要が出てきたということは、「ゲームが成功した」ということですからね。
cocos2d-xはオープンソース
オープンソースのゲームエンジンです。ゲームエンジンというよりも、フレームワーク(共通処理を使いやすくまとめたもの)の方が近いかも。
オープンソースなので無料で使えます。商用利用もできますし、売り上げに対してロイヤリティがかかることもありません。
「じゃあ最強じゃん!」
と思われるかもしれませんが、2Dゲームの作成にはかなり強いですが、3Dのゲームを作るならUnityやUnreal Engineの方が作りやすいと思います。それぞれの得意分野があるので、その点も考慮すると良いかもしれません。
UnityとUnreal Engineで価格を比較
UnityとUnreal Engineで価格を比較してみます。cocos2d-xは無料なので、比較はしません。
使い始め
UnityもUnreal Engineも、使い始めるのにはお金がかかりません。Unityではスプラッシュスクリーンのカスタマイズを除けば、ゲーム開発においてはフル機能を使えますし、Unreal Engineも最初からフル機能を使えます。
ゲームをリリースする段階
Unityの場合は、スプラッシュスクリーンをカスタマイズするならここでお金を使うことになると思います。Plusであれば月4,400円払うか、一括で一年分の43,995円を払うかの選択ですね。一括で払うと一月当たり約3666円なのでちょっとお得。
Unreal Engineはこの段階ではまだお金を支払う必要はありません。
売り上げが四半期で3000米ドルを超えたら(2019年末までの情報)
Unityではロイヤリティフリーなので、いくら売り上げようと、売り上げに対しての支払い義務は発生しません。
Unreal Engineでは四半期で3000米ドルを超えた部分について、5%のロイヤリティが発生します。イメージ的には3000米ドルは基礎控除ですね。
(追記)2020年半ばにパブリッシングライセンスのロイヤリティが変更され、3000米ドルならUnreal Engineだとロイヤリティは発生しません。
売り上げが12ヶ月で10万米ドルを超えたら
UnityではPlus以上のライセンスに切り替える必要があります。元々Plusのライセンスを使っているなら特に変更は必要ありません。
Unreal Engineでは各四半期で3000米ドルを超えた分に対して5%を支払うことになります。ここまでくるとUnreal Engineの方が支払う金額が大きくなりますね。
Unityの場合はスプラッシュスクリーンをカスタマイズするなら今手元にあるお金から支払うのに対し、Unreal Engineの場合は将来の売り上げから支払っていきます。この違いも意識しておくと良いでしょう。
稼いだ金額でシミュレーション
今回紹介した3つのゲームエンジンについて、ひとつのゲームで稼いだ金額ごとにいくら支払う必要があるのか簡単にシミュレーションしてみましょう。計算を簡単にするため、ここではゲームエンジンに対する支払いのみ発生するとします。
また、1ドル110円の仮想レートで計算します。
四半期で10万円
リリースしたゲームが四半期で10万円の売り上げになったケースです。
Unity
Personalライセンスを使っているのであれば、支払いは0円、手元に10万円残ります。
Plusライセンスを使っていれば、支払いは一月当たり4,400円で、100,000 – 4,400 * 3 = 86,800円が手元に残ります。
Unreal Engine
パブリッシングライセンスであっても、四半期で3,000米ドルを超えていないので支払いは0円、手元に10万円残ります。
cocos2d-x
支払いは発生しないので手元に10万円残ります。
ゲームエンジン | 手元に残るお金 |
Unity(Personalライセンス) | 100,000円 |
Unity(Plusライセンス) | 86,800円 |
Unreal Engine | 100,000円 |
cocos2d-x | 100,000円 |
四半期で50万円
リリースしたゲームが四半期で50万円の売り上げになったケースです。
Unity
Personalライセンスを使っているのであれば、支払いは0円、手元に50万円残ります。
Plusライセンスを使っていれば、支払いは一月当たり4,400円で、500,000 – 4,400 * 3 = 486,800円が手元に残ります。
Unreal Engine
四半期で3,000米ドル、日本円で330,000を超えたので、超えた分に対して5%のロイヤリティが発生します。170,000 * 0.05 = 8,500円のロイヤリティを支払って491,500円が手元に残ります。
(追記)EULAの変更に伴い、そのゲームで収益を得たうち最初の50万円ならロイヤリティは発生しません。まるまる50万円残ります。
cocos2d-x
支払いは発生しないので手元に50万円残ります。
ゲームエンジン | 手元に残るお金 |
Unity(Personalライセンス) | 500,000円 |
Unity(Plusライセンス) | 486,800円 |
Unreal Engine | 491,500円(追記: 更新後のライセンスなら500,000円) |
cocos2d-x | 500,000円 |
1年で1200万円
リリースしたゲームが1年で1200万円の売り上げになったケースです。
Unity
Personalライセンスを使っているのであれば、支払いは0円、手元に1200万円残ります。ただし、過去12ヶ月のUnityを使った売り上げが1100万円を超えているので、次の月からはPlus以上のライセンスを使う必要があります。
Plusライセンスを使っていれば、支払いは一月当たり4,400円で、12,000,000 – 4,400 * 12 = 11,947,200円が手元に残ります。
Unreal Engine
ここでは売り上げが各四半期で300万だったと仮定します。
四半期ごとに330,000円が差し引かれて計算されるので、各四半期で支払うロイヤリティは(3,000,000 – 330,000) * 0.05 = 133,500円、年間だと133,500 * 4 = 534,000円。12,000,000 – 534,000 = 11,466,000円が手元に残ります。
(追記)EULAの変更に伴い、1200万円でもロイヤリティが発生しません。すごい。
cocos2d-x
支払いは発生しないので手元に1200万円残ります。
ゲームエンジン | 手元に残るお金 |
Unity(Personalライセンス) | 12,000,000円 |
Unity(Plusライセンス) | 11,947,200円 |
Unreal Engine | 11,466,000円(追記: 更新後のライセンスなら12,000,000円) |
cocos2d-x | 12,000,000円 |
1年で2400万円
リリースしたゲームが1年で2400万円の売り上げになったケースです。
Unity
ここまでくるとPersonalのライセンスを使っているということはないと思うので、PlusかProを使っていると想定します。
Plusライセンスを使っていれば、支払いは一月当たり4,400円で、24,000,000 – 4,400 * 12 = 23,947,200円が手元に残ります。ただし、過去12ヶ月のUnityを使った売り上げが2200万円を超えているので、次の月からはPro以上のライセンスを使う必要があります。
Proライセンスを使っていれば、支払いは一月当たり16,500円で、24,000,000 – 16,500 * 12 = 23,802,000円が手元に残ります。
Unreal Engine
ここでは売り上げが各四半期で600万だったと仮定します。
四半期ごとに330,000円が差し引かれて計算されるので、各四半期で支払うロイヤリティは(6,000,000 – 330,000) * 0.05 = 283,500円、年間だと283,500 * 4 = 1,134,000円。24,000,000 – 1,134,000 = 22,866,000円が手元に残ります。
(追記)EULAの変更に伴い、2400万円でもまだロイヤリティが発生しません。ワォ!
cocos2d-x
支払いは発生しないので手元に2400万円残ります。
ゲームエンジン | 手元に残るお金 |
Unity(Plusライセンス) | 23,947,200円 |
Unity(Proライセンス) | 23,802,000円 |
Unreal Engine | 22,866,000円(追記: 更新後のライセンスなら24,000,000円) |
cocos2d-x | 24,000,000円 |
シミュレーションのまとめ
cocos2d-xは金額の面で言うと強いです。
四半期で3,000米ドルを超えるまではUnreal Engineが圧倒的に安く、売り上げが増えていくにつれ、Unityの方が手元に残るお金が大きくなります。
1200万円になる頃には約50万円ほどUnityが多くなり、2400万円になる頃には約100万円の開きになります。このお金があればもう1人月分くらいリソースを確保できますね。
(追記)Unreal EngineのEULAの変更に伴い、最初の約1億円まではロイヤリティが発生しないのでUnreal Engineの方が安くなりました。ハイエンド向けのプラットフォームをターゲットにするなら、UE5のことも考えるとUEが良い選択肢かもしれません。
まとめ
この記事ではお金の観点でゲームエンジンを使うのに必要な金額を比較しました。
金額だけで比較するならcocos2d-xが圧勝ですが、ゲームエンジンが得意とするジャンルや性能、またアセットストアの存在など、ゲームの作りやすい環境になっているかどうかは別の話です。
あくまで指標の一つとして参考にしてもらえば良いかと思います。
この記事で伝えたかったことは、使い始めるにあたってはどのゲームエンジンも無料で始められるので、You、まずは飛び込んじゃいなよ! ってことでした。
ゲーム開発の始め方についても合わせて参考にしてもらえればと思います。
ゲーム開発の攻略チャートを作りました!
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