魔法やスキルのネーミングには法則性を盛り込むのが吉【ゲーム開発】
以前、下の記事で武器や魔法のネーミングについて厨二病と絡めて扱ったのですが、今回は魔法に注目してネーミングの法則性を考えます。
法則性があることでゲームのプレイヤーが「どの属性の魔法であるか」「威力はどれくらいか」などを把握しやすくなり、ゲームを遊ぶときの抵抗感が少なくなってスムーズに遊んでくれるようになります。
プレイヤーは「この魔法はどんな効果なんだろう」という点に頭を使いたいのではなくて、「この魔法を使ってどんな戦略が立てられるだろう」という点に頭を使いたいと思うので、どんな魔法であるかを把握しやすくするのは大切です。
このページではどのような魔法であるかを把握しやすくなるためのキーポイント、名前の法則性について考えてみたいと思います。
有名なゲームの例
魔法の名前は、威力が強くなるほど強そうな名前になっていきます。有名なゲームからいくつか例をみてみましょうか。
ドラゴンクエストシリーズ
ドラクエでは系統ごとに名前が変化していきます。文字数も増えていく傾向があるので、文字数が多ければ強い、となんとなく分かるようになっています。
メラ→メラミ→メラゾーマ
ヒャド→ヒャダルコ→ヒャダイン→マヒャド
ギラ→ベギラマ→ベギラゴン
バギ→バギマ→バギクロス
イオ→イオラ→イオナズン
といった形で名前が変化しています。
魔法の名前と属性もある程度似通っていて、メラだったらメラメラ燃える火、ヒャドはヒヤヒヤする氷、ギラはギラギラしている閃熱、といった感じです。……バギとイオはわかりにくいかも?
脱線しますが、ダイの大冒険ではギラ系の魔法が目立っていて嬉しかった記憶があります。ゲームだといまいち主役になりきれないギラ系の魔法ですが、「極大閃熱呪文(ベギラゴン)」のように強そうな当て字と一緒に登場したときはカッコ良くて震えました。
属性でカテゴライズされるようになったのはDQ3からで、それまでは単なる攻撃呪文という分け方でした。
ファイナルファンタジーシリーズ
FFだと法則性が分かりやすくて、英語の名前が語形変化しています。
ファイア→ファイラ→ファイガ
ブリザド→ブリザラ→ブリザガ
サンダー→サンダラ→サンダガ
のように基本形→〜ラ→〜ガと変化します。
FF2では基本形+Lv8のように習熟度がついた表現になっていますが、FF3以降では上記の語形変化が使われています。
基本形はファイア(Fire)、ブリザド(blizzard)、サンダー(Thunder)のようにわかりやすい英語になっているのも特徴です。中学生、高校生あたりなら魔法を使う前からどのような属性なのか分かるようになっています。
女神転生シリーズ
分かりにくい魔法でおなじみのメガテン・ペルソナは
アギ→アギラオ→アギダイン、
ブフ→ブフーラ→ブフダイン、
ジオ→ジオンガ→ジオダイン、
と案外法則性はまとまっています。
全体化された魔法だと「マハ」がつくのでマハラギ→マハラギオン→マハラギダインとちょっと名前も変わります。
ファミコン時代の女神転生はアギ系に相当するのはボット系、ブフ系に相当するのはブリズ系と、またちょっと違っているので、ここではある程度体系化された真女神転生1以降の法則性に目を向けるようにします。
ちょっと脱線しますが、ペルソナシリーズの第1作目、女神異聞録ペルソナでは魔法の系統が物理魔法、精霊魔法、暗黒魔法、神聖魔法のように大きく分けられていて、さらにその中でアギ系、グライ系、フレイ系、ジオ系、…のように細かく分かれています。魔法の系統がここまで分かれているのは、敵の耐性もここまで細かく決められているということでもあります。
ジュブナイル向けの女神転生を想定したペルソナでしたが、中身はメガテン以上にハードなゲームだったりします。ラスダンでは高難易度ダンジョンであるにもかかわらず、セーブポイントからラスボスまで1時間かかるという鬼畜仕様。FF3のクリスタルタワー以来の衝撃ですね。
メガテンの魔法に関しては以下のページでも触れているのでよかったらご覧あれ。
「なんとなく分かる」が大事
こうした法則性はユーザーにとってはありがたいもので、使おうとしている魔法の属性がどんな系統で、威力がどれくらいなのか名前で見積もることができます。
ぱっとみて「強い!」と分かる魔法ならそれを選べば良いですからね。
名前の変化から威力が分かれば良いのですが、厨二ゴコロが出て名前に凝ってしまった時は、
「ん? ……どれが強いの?」
とプレイヤーを混乱させるもとになります。
戦闘中に魔法の説明文を読まないとどれくらいの威力なのか分からないのはちょっと大変かもしれません。(私は説明文を読むのが大好きですけど)
法則性についてはゲーム内で明示する必要はありませんが、ユーザーがなんとなく感じ取れる名前にしておくと混乱を避けられます。
ネーミングの語形変化の参考
中学校の時のことを思い出して欲しいのですが、英語の現在形、過去形、過去分詞形だと、なんとなく語幹が似ていましたよね。
write – wrote – written
begin – began – begun
sing – sang – sung
みたいな。同じ系統だとなんとなく分かります。実は英語の不規則変化の動詞も参考になったりします。
魔法の名前を考える時に盛り込みたい法則性としては、
- 同じカテゴリの魔法であることが分かるもの
- 語形変化で威力の違いが分かるもの
が良さそうです。
厨二ハートを手懐けて
開発が進んできてテンションが上がってくると「かっこいい名前を使いたい!」なんて思ってしまうこともありますが、ゲームを遊ぶ上で混乱を招かないか? という視点も思い出せると良いと思います。
ゲーム全体の雰囲気を壊さないか、プレイヤーに分かりにくさを感じさせないかなど、これらをクリアできる名前なら導入するのも良いですね。
系統立てた魔法とは別に、それ単体で存在する古代魔法みたいな位置付けの魔法だったら別の法則を適用するのもありです。魔法の位置付けのイメージとしてはFFでいうところのフレアとかホーリーのような一点もののような感じです。
全体の法則性から外れている=異質なものというのがストーリー上でも補完されているとなおよしです。上の例で挙げたフレアとホーリーの場合、FF5で2つの塔に封印されている魔法として登場するため、通常の語形変化とは別の位置付けになっています。
ゲーム全体の雰囲気との調和も大切で、例えば他の魔法が4文字になっているのに、ひとつだけ8文字くらいの長さになってたりするのはちょっと変な感じがします。また、英語をベースとした魔法名なのに、ある魔法だけドイツ語で「クーゲルシュライバー」みたいになっていたらこれも雰囲気にあっていませんよね。
厨二ハートがうずうずしてきたら、キャラクターによって使う魔法・スキルの名前に法則性を持たせるのも良いかもしれません。あるキャラクターはシンプルに英語をベースにした魔法を使い、また別のキャラクターはやたら厨二病な名前の魔法を使うというのもアリかもしれません。この場合、キャラクター自身の立ち位置や性格が厨二病的なものであると説明を加えることで説得力を持たせることができるかもしれません。
いずれにしても、製作者が使いたいだけの名前、というのが浮き出てしまうと「ただの厨二病」と切り捨てられてしまいますから、厨二病的な名前を使いたいならストーリーやゲームの雰囲気によるサポートも検討してください。
まとめ
ゲームに登場する魔法やスキルについて、法則性という観点からプレイヤーに分かりやすく伝える点について考えてみました。
魔法の名前に法則性があると、属性や効果がプレイヤーに伝わりやすいのでなんらかの法則性を使ってみると良いでしょう。
また、名前そのものが浮いていると「ただの厨二」と言われてしまってプレイヤーが置いてけぼりになるので、魔法名の雰囲気がゲームの雰囲気、ストーリーの雰囲気とマッチしているようにするのも大切です。
厨二病とネーミングについては以下の記事でも触れているのでよかったらこちらもご覧ください。
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