実は序盤はチュートリアルになっていたドラクエ1の心遣い

実は序盤はチュートリアルになっていたドラクエ1の心遣い

今までにやったゲームで己を語るシリーズ。どうもtodo(@Explorers_todo)でございます。

ドラクエ1といえば64kBの容量で作成されているRPGとして有名です。容量削減のアイディアがいくつも盛り込まれており、今でも「よくこの容量でRPGを作ったな……」と頭が上がりません。

当時はPC向けのゲームとしてRPGは存在していたものの、家庭用ゲーム機のファミコンでRPGを発売した先駆けの作品でもあります。まだ誰もリリースしていないジャンルのゲームを発売するはもちろん恐怖もあったでしょうけど、それが今では多くの人に愛される作品になったというのは夢のある話です。

ドラクエ1について語り始めれば長くなってしまいそうなので、ここではドラクエ1に隠されたプレイヤーへの配慮の部分について考えます。

 

 

参考文献

いろいろな情報を断片的に見てきましたが、やはりドラゴンクエスト大辞典がとてもよくまとまっていて良かったです。ここを読んでいるだけで何時間も吹き飛びます。

 

当時のRPGの状況

冒頭でも少し触れましたが、ドラクエ1の発売以前では「RPGはPCで遊ぶもの」という認識だったようで、アメリカで作られたウルティマやウィザードリィなどをうん十万するAppleⅡで遊ぶ貴族の嗜みだったようです。

ウィザードリィではスペルをキーボードで入力して操作していたとかで、自分で「TILTOWAIT」とか入力して魔法使いの気分を味わっていたとかなんとか。また、「カラカラカラ……カタン」というディスクの読み込み音の変化で「あ、敵が出るな」ということまで分かったとかなんとか。

前の会社にいた時に先輩から「そうそう、ディスクが何枚もあったんだよね」なんて思い出話を聞いたこともありました。

ドラクエ1が発売される前はPCでRPGが遊ばれていて、まだ一般には浸透していない状況だったのです。

 

ターゲットは誰か?

ドラクエ1の生みの親である堀井雄二氏は、元々ジャンプでパソコンゲームのコーナーのライターを努めていました。彼はパソコンでゲームをすることが多く、ウルティマやウィザードリィで遊んだところRPGにハマって、それを日本でも広めようとドラゴンクエストを開発するに至ったのでした。

ここで注目したいのはゲームを届けるターゲットユーザーです。

それまでRPGはPCで遊ぶのが主流でした。PCでゲームを遊ぶ層というのは自分でやり方を調べて、難しかろうと根性でクリアするガッツのある人が多いので、多少ゲームが不親切であってもそれなりに遊んでもらえたようです。

しかし、ファミコンでゲームを遊ぶのは子供たちがメイン。分からないことがあればすぐにポイされてしまうので、遊び方をうまく伝えなければなりません。

 

操作方法もPCとは異なる

ゲームを楽しむ

PCのキーボードを使って操作していたPC向けRPGでは、矢印キーの他にたくさんのキーを使うことができます。上で挙げたウィザードリィの例では、魔法の選択はカーソルを移動させるのではなくキーボードで入力していました。

対してファミコンでは矢印キーに加えてAボタンBボタン、スタートボタンにセレクトボタンと使えるボタンが限られています。こうした操作方法の違いもネックになる部分でした。

そこで、ドラクエを発売する前にアドベンチャーゲームをファミコンに移植して、ファミコンで操作するためのインタフェースを作ったようです。

使えるボタン数の違いは現代でも気にすべき点で、PC向けのゲームであればキーボードを使って複数のボタンを同時押しするような操作を行うでしょうし、家庭用ゲーム機であればコントローラーに用意されているボタンの数で操作できる範囲で機能を作っていくことになります。

スマートフォン向けのゲームであればそもそもコントローラーがないので、画面の中をタップして操作してくようになります。

 

プロトタイプ版のテスト結果は……

ドラクエ1を開発している際、実はプロトタイプ版を作っていたようで、これをメインターゲットとなる子供たちに遊んでもらったそうです。この時はフィールドからいきなりスタートしていて、ラダトームの城と町の間から始まっていたそうで、目的が分からずにフィールドをさまよって敵と遭遇し、ゲームオーバーになる子供が続出したそうな。

いきなりフィールドからスタートするのでゲームの目的すら分かっていない状態ですからね。

しかもゲームオーバーになったら最初からやり直しの仕様だったようで、今のようにゴールドの半分を失った状態で王様の前から再開する、という感じじゃなかったんですよね。デスルーラが使えなくて、経験値をそのまま失ってしまうのは子供にとっては辛いです。

難易度も調整されたそうで、最初はもっと勇者のステータスが低かったと聞くと、難しくしすぎなくて良かったと感じます。

現代の私たちが忘れてはいけないのが、当時はRPGの存在を知っている子供は稀だったということです。RPGをやったことのある人なら分かることでも、子供たちにとっては全く未知の世界です。

どうやって遊ぶのか、どうやったら楽しめるのかをきちんと説明するのが大切でした。製品版には説明書があるとはいえ、読まないでゲームを始める子供も多いはずですから、ゲームだけを起動した時にも分かるようにしないといけません。

 

王様の目の前から始めるようになった

このプロトタイプ版のテストを受け、製品版では王様の目の前でゲームが開始するようになりました。王様から旅の目的を聞かされ、王様の部屋から出るには宝箱からアイテムを入手する、入手した鍵を使って扉を開ける、階段と重なって「かいだん」コマンドを選択する、といった形でゲーム内で使用するアクションを実際にやってみてもらう形になりました。

また、ラダトームの城を出てフィールドに行くと、最終目的地であるりゅうおうの城が見えるのもポイントです。目的をはっきりと明示しているので、プレイヤーも「あそこに行くためにはどうしたらいいんだろう」といろいろ探索を行なっていくわけです。

実はこのゲーム開始時にチュートリアルを行うというのは、スーパーマリオでも行われていた型式でした。ステージ1-1ではスーパーキノコ、1UPキノコ、ファイアフラワー、スターといったゲーム内に登場するアイテムが全て存在していますし、土管を潜って地下に向かうという動きも用意されています。

ファミコンのゲームといえば説明書がきちんと用意されていましたが、ゲームそのものだけを遊んだ時にも、最低限ゲームを楽しむための情報を提示するというのは既に黎明期から行われていたのでした。

今でも多くのゲームでチュートリアルが用意されています。というか今は説明書なんてほとんど用意されていないことが多いですし、提供されていても電子版です。電子版の説明書はプレイヤーとしてもあまり読まないんじゃないかなーというのが私の主観で、コントローラを握っていると「早くゲームで遊びたい!」と思ってしまいます。

なので、ゲーム内に用意されたチュートリアルってとても大切なんですよね。

 

まとめ

個人的な思い出話を混ぜつつ、ドラゴンクエスト1に秘められているプレイヤーへの気遣いとしてチュートリアルの存在を紹介しました。

驚異的なのはこのチュートリアルを含めていたとしてもゲーム自体が64kBに収まっている点です。私なんかはチュートリアルのためにまた別の画像を用意して……とどんどん容量を大きくしてしまいますが、情報の伝え方を工夫することで必要なリソースを増やすことなくプレイヤーに遊んでもらいやすくできるという視点は大きな学びです。

家庭用ゲーム機でRPGがほとんど発売されていない時代にこれをやっていたのは素晴らしいことですね。

     

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